雑誌の図書館「大宅壮一文庫」を御存じでしょうか?記者・ライターなど業界人御用達の雑誌資料の宝庫です。インターネット全盛の世の中ですが、ここでしか見ることができない貴重な資料も保管されています。
雑誌の図書館に行ってみたいな。存在を知ったけれど場所はどこだろう。
一般人は使えるのかな?
本記事で分かること
雑誌の図書館「大宅壮一(おおやそういち)文庫」の行き方・使い方
大宅壮一文庫は日本で初めての雑誌図書館で、評論家・大宅壮一(1900-1970)の雑誌コレクションを引き継いで、明治時代以降130年余りの雑誌を所蔵しています。雑誌図書館として一般に開放されています。
大宅壮一文庫はどこにある?アクセスは?
大宅壮一文庫は東京都世田谷区にあります。新宿駅から約30分、東京駅から約50分ほどで向かうことができます。京王線八幡山駅から徒歩8分の立地で、都心からのアクセスは比較的良好です。
〒156-0056 東京都世田谷区八幡山3丁目10番20号
駅から大宅壮一文庫までの具体的な歩き方
新宿から京王線の各駅列車に乗り込み、八幡山駅に降ります。
改札口の目の前を走る赤堤通りを、南の経堂方面へ向かって8分ほど歩きます。歩道は整備されており、都立松沢病院の外構に緑が豊かで、道を一本外れれば閑静な住宅街になっています。やがて、赤いポストの印象的な大宅壮一文庫の外観が現れます。一般的な図書館をイメージしていくと、2階建で小ぢんまりした印象ですね。
お金はかかる?具体的な使い方
一般の利用者は、500円の入館料(65歳以上半額)を支払って利用可能です。500円で利用可能な冊数は15冊で、追加することも可能です。図書館は閉架式(雑誌は書庫に保管されている)ため、1階に並んでいるパソコンで閲覧したい雑誌を検索して「閲覧・複写申込書」を記入し、2階のカウンターで提出します。係員が該当する資料を探し出して、渡してくれる形式です。
実際に使ってみた
私も実際に使ってみました。好きな作家である「近藤紘一」さんに関連する雑誌を調べました。検索機(1階のPC)にキーワードを入力し、検索された候補の中から、知っているもの、地元の図書館で後ほど調べられるもの(「文藝春秋」など著名な雑誌は地元の図書館で後日探し出せそうだった)を除き、15冊を選び、「閲覧・複写申込書」を記入し、2階のカウンターで提出すると、間もなく係員が該当する資料を探し出して、渡してくれました。
近藤紘一氏について調べた私の感想(小文)
調べる情熱のこと
近藤さんに書かれた書物は、購入できる限り、その多くを入手したと思う。しかし雑誌については、もはや市場には出回っていない。いつか、大宅壮一文庫で資料に当たってみたかった。自分が生まれる前に亡くなっている人について、なぜこのような情熱を傾け、休日を費やし、調べ、考え、想いを巡らせているのか・・・最早私も説明できない。
タイム・トラベル
私が探した最も古い資料は、近藤紘一の年長の従兄弟である近藤幹雄氏の対談記事である。同紙に関する記事は一誌しか確認できなかったが、1965年に発行された「サンデー毎日」における対談企画である。表紙は三船敏郎と石原裕次郎。1ページ目では、ベトナム戦争に従軍する南ベトナム兵が、亡くなった我が子の包まれたゴザを手に、悲痛な表情を浮かべていた・・・撮影者は、ベトナム戦争報道では知られた存在の、岡村昭彦である。近藤幹雄も、朝鮮戦争に従軍していたから、戦争経験者二人の対談となったようだった。
5時間も集中してこうした資料に目を通していると、目の前の世界が、遠く過ぎ去った過去であることが不思議な気がしてくる。多くが雑誌であるから、近藤さん家族の笑顔や、愛犬、暮らしていた家、壁に掛けた絵、ソファーの色・・・様々な写真を見て、たくさんの言葉に触れた。
過去の人達との対話
何回も繰り返し、同じ本を読む、という経験を近年するようになった。なんだか、作者と対話でもしているような気分になる…などと思っていたが、そんなときに、ルネ・デカルトの「方法序説」で警句に触れた。
「過去の世紀の人々と交わるのは、旅をするのと同じようなもの・・・あまり多くの時間を費やすと、しまいには自分の国で異邦人となってしまう。」
昔から、「過ぎたるは・・・」などというが、なんだか今日ぐらいは、過去の世界を旅していたいような、そんな気がしている。
コピー・サービスで雑誌の印刷が可能
渡してもらった資料については、2階の閲覧スペースで読むことが可能です。私は窓から通り沿いの並木が見える席に座って、閉館間近まで集中してページをめくりました(笑)。
コピーサービスがありますが、1枚80円(国会図書館は30円)と割高なので、厳選して10枚ほどコピーを取りました。
そもそも大宅壮一って誰?
大宅壮一さんの名前は、ノンフィクションの書籍に与えられる賞の名前にもなっているので、見覚えのある人もあるかもしれません。
大宅壮一さん自身は「一億総白痴化」などの語録でも知られる評論家として知られていています。同氏の集めた「雑誌」が、「大宅壮一文庫」に雑誌の図書館として残されているということです。公益財団法人が運営しており、近年はインターネットの普及によって経営が難しくなっているとのことですが、国立国会図書館ですら所蔵していない雑誌を数多く所蔵しているこの館は、探し物がある人には貴重な場所です。
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